短編小説

短編小説

地球の裏側へ「ありがとう」

私は横浜にあるショッピングモールの一角で絵を描いている。 いわゆる「似顔絵」と言われるもので、観光客が足を止めてくれたら、すかさず声をかける。 「可愛く描きますよ。似顔絵いかがですか?」カップルの場合は、男性よりも女性に声を掛けるようにして...
短編小説

みんな、教祖を求めてる

宗教を信仰する家に生まれ落ちた。私には、当たり前の毎日。祈りもお布施も慈善活動も。今日も教祖様の教えを乞う為、教本を持って出かける。近所には、別の宗教の集会所がある。朝晩聴こえてくる鈴の音、祈りの声。アヤシイ?コワイ?ヤバイ?友人Aは、自己...
ミステリー

ミステリー小説「十条探偵事務所」

東京都北区、十条駅から十条銀座商店街を通り抜け、少し行った角を右に折れたところにある古ぼけたマンションのニ階。そこが私の仕事場である。玄関ドアに小さく「十条探偵事務所」と白いプレートを貼り付けているが、そこを訪れる客はほとんどいない。なぜな...
短編小説

水車

三年前のこと。四月のある晴れた日、親父が逝った。肺がんが全身に転移しており、最期は病院の天井を眺めて、人生の終止符を打った。お袋は、俺の成人式を楽しみにしていたが、その前に手の届かない場所へ行ってしまった。俺は、生物学上は雌、つまり女の子と...
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