創作童話「色と形の世界」作:鵠更紗

童話

ここはピンクの丸の世界。この世界のものは全てピンク。そして全て丸でできている。椅子もピンク、テーブルもピンク。本も丸くて鏡も丸。ピンクこそ幸せ。丸こそ素晴らしい。

 お父さんとお母さん、子どもも、となりの家もペットも植物も全てがピンクで丸いのです。

 また、別の世界。こちらは青。全てが青。右を見ても左を見ても、ありとあらゆるものが青。そして形は四角。青こそ楽しい、四角こそ美しい。

 家の形も四角。車の形も四角。冷蔵庫も青、洗濯機も青。

 また、別の世界。こちらは黄色。全てが黄色。どこまでいっても全部三角形。あっちを見ても三角、こっちを見ても三角形。黄色こそ明るい。三角形こそ可愛い。

 公園も三角。お店も三角。ブランコも黄色、噴水も黄色。

 それぞれの世界で、それぞれの色と形が、自分たちの世界で暮らしていた。

 そんなある日のこと。

 ピンクの丸の世界がぐらぐら揺れて、ピンクの丸がころころ、ころころ転がった。

 あっちへころころ。

 こっちへころころ。

 ピンクの丸は、てんでばらばらちらばった。

すると、ひとつのピンクの丸が、青の四角の世界へまよいこんだ。

 どこを見ても青。青。青。青。

 「うわぁ、ピンクのものがひとつもないや。それから丸いものもない。こんな世界があったなんて、わたしは初めて知ったのよ」

 青くて四角い家の前、青くて四角いドアを「トン、トン、トン」

とノックした。

 中から出てきたのは、青くて四角い奇妙な生き物。

 「あなたはだあれ?」

 「きみこそだあれ?青くもなければ四角くもない。そんな生き物この世界にいるの?ぼくは初めて見たよ、きみのこと」

 「わたしの世界では、これが普通よ。ピンクの丸の世界からきたのよ」

 「どうぞ中へ入ってごらんなさい。君の話を聞かせてもらうよ」

 「ありがとう。あら、不思議。見渡す限り、青くて四角。ここは青くて四角い世界?」

 「そうだよ、ここは青くて四角い世界さ」

 ピンクの丸と青の四角は仲良くなって、一緒に暮らすことにした。

 今度は別のピンクの丸が、黄色くて三角の世界へ迷い込んだ。

 ころころ、ころころ転がって、たどりついたのは黄色くて三角の公園。

 「うわあ、なんてまぶしい色なんだ。こんな色は初めて見たよ。それから全てが三角なんて、刺さってしまったら痛そうだ」

 そこへ一人の黄色の三角がやってきた。

「おやおや、君はだれだい?初めて見る色と形だね」

 「ぼくはピンクの丸の世界からやってきたんだよ」

 「おやおや、そうかい。初めまして。どうぞ仲良くしようじゃないか。あちらの黄色くて三角のベンチで話をしよう」

 ピンクの丸と黄色の三角は仲良くなって、一緒に暮らすことにした。

 それから、何年も時が経ち、ピンクの丸と黄色の三角は家族になって、角の丸い三角が生まれた。色はオレンジ。その子はとってもかわいくて、大事に大事に育てていた。そのかわいい子を見せる為に、ピンクの丸の世界へと出かけることにした。

 一方、ピンクの丸と、青い四角の家でも子どもが生まれ、角の丸い四角が家族の仲間入りをした。色は紫。その子をとっても大切に育て、ピンクの丸の世界へ見せに行くことにした。

 ここはピンクの丸の世界。てんでばらばらにちらばった、ピンクの丸がよその世界で仲良くなって、いろいろな色、いろいろな形の子どもを連れて帰ってきていた。

オレンジ、紫、緑、中には七色の子どももいた。

 

 すると、ピンクの丸の世界だけで暮らしていたものが、言い出した。

 「ピンクでない色なんて信じられない」

「丸でない形なんてあり得ない」

 そう言って、いろいろな色といろいろな形のものたちを追い出した。

 仕方がないので、いろいろな色といろいろな形のものたちだけで、新しい世界を作って暮らすことにした。みんなが違う色でみんなが違う形。けんかや戦争なんて起こらない。だってみんなが違うんだから、お互いに出来ることと出来ないこと、それぞれ助け合って暮らしていた。

 いろいろな色のいろいろな形の世界では、いつも笑い声が響き、七色の虹がかかり、明るい世界が広がっていた。

 ピンクの丸の世界、いろいろな色のいろいろな形がある世界、あなたはどっちで暮らしたい?

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