けいくんは、ようちえんのすみれぐみです。
あるひ、せんせいがいいました。
「みなさん、あしたはえんそくへいきます。おべんとうをもってきてくださいね。」
「はーい。」
けいくんは、おむかえにきたママにいいました。
「あしたのおべんとう、おばあちゃんのしおむすびにしてね。」
「えぇ、そうね。おばあちゃんのしおむすびにしましょうね。」
おばあちゃんのしおむすびというのは、いなかのおばあちゃんのいえにあそびにいったときにたべた、しおあじのおむすびのことです。おばあちゃんがたいせつにそだてたおこめは、しろくてつやつやして、くちにいれるとほんわりあまくてとってもおいしいのです。たきたてのしろいゆげがたったごはんをすこしさましてから、てにたっぷりしおをふって、さんかくににぎると、おばあちゃんのしおむすびのかんせいです。
あまーいおこめとしょっぱいしおがくちのなかでまざって、ほっぺたがおちそうになるくらいおいしいのです。おばあちゃんは、たいせつにそだてたおこめを、ときどきけいくんのいえにおくってくれます。
つぎのひ、おおきないけのあるこうえんにえんそくへいきました。すみれぐみのみんなは、いけのほとりで、おべんとうをたべます。
「ぼくはさけおむすび。」
「わたしはおかかのおむすび。」
「ぼくのはうめぼし。ちょっとすっぱい。」
みんなのむすび、とってもおいしそうです。
みなみなちゃんがいいました。
「けいくんのおむすびはなにがはいっているの？」
「ぼくのは、しおむすびだよ。」
「しおむすび？」
みんなびっくりして、けいくんのおむすびをのぞきこみました。
「しおがはいっているの？」
「ううん、ちがうよ。てにしおをふっておむすびをつくるんだよ。なかにはなにもはいっていないけど、これがとってもおいしいんだ。」
「えぇ、なにもはいっていないのにおいしいの？」
「うん。ぼくはこのしおむすびが、おむすびのなかでいちばんすきだよ。そうだ、あしたぼくのいえにあそびにおいでよ。おばあちゃんのしおむすびをごちそうするよ。」
「わぁ、たべてみたい。」
「わーい。たのしみだなぁ。」
みんなおおよろこびです。
すると、それをきいていた、いけのアヒルたちがいいました。
「ガァガァ。あしたは、けいくんのいえでしおむすびをごちそうしてくれるんだって。ガァガァ。」
それをきいていた、ネコのおやこがいいました。
「ニャアニャア。あしたは、けいくんのいえでしおむすびをごちそうしてくれるんだって。ニャアニャア。」
それをきいていた、さんぽちゅうのいぬたちがいいました。
「ワンワン。あしたは、けいくんのいえでしおむすびをごちそうしてくれるんだって。ワンワン。」
それをきいていた、でんせんのうえのハトたちがいいました。
「トゥットゥルー。あしたは、けいくんのいえでしおむすびをごちそうしてくれるんだって。トゥットゥルー。」
えんそくからかえると、けいくんはママにいいました。
「ママ、あした、おばあちゃんのしおむすびをすみれぐみのみんなにごちそうするやくそくをしたの。たくさんつくってくれる？」
「あら、たいへん。それでは、たくさんおこめをたきましょうね。けいくんもおてつだいおねがいね。」
つぎのひ、ピンポーンとげんかんのチャイムがなりました。
げんかんをあけると、すみれぐみのみんなとアヒルとネコとイヌとそのかいぬしたちとハトのぎょうれつができていたのです。
けいくんとママは、みんなにおばあちゃんのしおむすびをつくりました。
「しおむすび、とってもおいしいね。」
「ガァガァ。」
「ニャアニャア。」
「ワンワン。」
「これはほっぺたがおちそうですね。」
「トゥットゥルー。」
けいくんは、にっこりわらっていいました。
「おばあちゃんのしおむすび、みんなでたべるともっとおいしいね。」
それをきいたいなかのおばあちゃんは、でんわのむこうでおおよろこびをしました。
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