ここは、６さいのおとこのこ、ケイくんのおうち。まどからオレンジいろのゆうひがさしこんで、ケイくんのほっぺをてらしています。
「コホン」
ケイくんは、せなかをまるめてくるしそうです。
「ケイくん、おかぜをひいてしまったのかしら？きょうは、はやめにねましょうね。」
ピンクのエプロンをして、おさらをあらっていたケイくんのママがやさしいこえでいいました。
ぼくは、ケイくんのおうちでいっしょにくらしているうさぎのぎーくん。まっしろでふわふわのけがきもちいいよ。ケイくんは、いつもぼくのあたまとからだをやさしくなでてくれるんだ。
ケイくんがいいました。
「ママ、のどがへんだよ。のどがヒリヒリしていたいよ。」
「あらたいへん、どうしましょう。」
「それに、なんだかこえがおかしいよ。」
「そうね、こんなときは、はちみつをなめるとのどにきくのだけれどあるかしら？ちょっとまっていてね。」
おかあさんは、たなのなかをさがしました。
ケイくんは「コホンコホン」とくるしそうです。
ぼくは、ケイくんのことがとてもしんぱいになって、ケイくんをじっとみまもっていました。
おかあさんが、ざんねんそうなかおをしてケイくんにいいました。
「はちみつ、なかったわ。あしたかってくるから、きょうのところはもうねましょうね。」
そとはまだあかるいけれど、ケイくんはめをとじていつのまにかねむってしまったようでした。
ぼくはいつものように、そーっとまどをあけて「ふーん、ふーん」と、おともだちをよびました。
ぼくのおともだちは、きのうえでくらしている、シマリスのまりちゃん。ちゃいろのせなかにしろいしまもようが、とってもかわいいおんなのこです。
「ぎーくん、よんだ？あそぶにはもうおそいじかんよ。」
シマリスのまりちゃんは、きのうえからはしっておりてきていいました。
「まりちゃん、ケイくんがたいへんなんだ。かぜをひいて、のどがいたくてたまらないみたい。まりちゃん、なにかよいかんがえはないかな？」
「あるわよ。のどがいたいときには、はちみつをなめるとすぐによくなるって、むかいのおばあちゃんがいっているのをきいたことがあるわ。」
「やっぱり！のどがいたいときには、はちみつがきくんだね。ケイくんのママもそういっていたよ。でも、はちみつをきらしちゃっているんだって。あしたにはママがかってきてくれるらしいけど・・・」
シマリスのまりちゃんは、ながいしっぽをぶるんとふっていいました。
「それならかんたんよ。このおかをこえて、かわをわたったところにミツバチさんたちがたくさんいるおおきなきがあるそうよ。いろいろなはなのみつをあつめているってきいたことがあるわ。それがはちみつなのよ。とってもあまくておいしいんだって。ミツバチさんに、そのはちみつをちょっぴりわけてもらえばいいわ。」
うさぎのぎーくんは、それをきいておおよろこびをしていいました。
「それはよいかんがえだね。では、さっそくミツバチさんにはちみつをわけてもらいにいこう。」
ぎーくんは、まどからぴょんと、とびだしていいました。
「ダメよ。」
「どうして？」
「わたし、ミツバチさんがこわいのよ。ミツバチさんのおしりには、とがったはりがあるのよ。それでさされたら、とってもいたそうよ。それに、ミツバチさんのおうちのばしょがわからないわ。」
「じゃあ、どうしたらよいかな？」
「わたし、おともだちにきいてみるわ。たぬきのタッキーよ。タッキーならわたしよりからだがおおきいから、きっとミツバチさんのこともこわくないはずよ。いっしょにいきましょう。」
うさぎのぎーくんとシマリスのまりちゃんは、おかをこえて、たぬきのタッキーにあいにいきました。
たぬきのタッキーは、おおきないわのほらあなのなかで、おひるねをしていました。
シマリスのまりちゃんがいいました。
「タッキー、おひるねちゅうにごめんなさいね。ミツバチさんに、はちみつをちょっぴりわけてもらいたいのだけれど、いっしょにいってくれないかしら？」
たぬきのタッキーは、目をこすりながらムニャムニャといいました。
「いっしょにいってあげたいけれど、ミツバチさんのブンブンというおとがこわいなぁ。それにおうちのばしょがわからないよ。かわをわたったむこうぎしにあるってきいたことがあるけれど。」
「それはざんねん！」
うさぎのぎーくんと、シマリスのまりちゃんはかおをみあわせてこまってしまいました。
「そうだ、ぼくがなかよくしているおともだち、バッタのバンくんにそうだんしてみよう。」
うさぎのぎーくんと、シマリスのまりちゃんとたぬきのタッキーは、かわをわたって、バッタのバンくんをさがしました。
バッタのバンくんは、くさのかげでおしょくじちゅうでした。
たぬきのタッキーはいいました。
「バンくん、ミツバチさんのところへいって、はちみつをちょっぴりわけてもらいたいのだけれど、いっしょにいってくれないかい？」
バッタのバンくんは、むしゃむしゃとくさをたべながらいいました。
「ミツバチさんには、このあいだ、おなじはなのみつをすおうとしたときにしかられてしまったんだ。ミツバチさんのおうちのばしょをわすれてしまったし、ぼくはいっしょにいけないな。」
「ざんねん！」
うさぎのぎーくんとシマリスのまりちゃんと、たぬきのタッキーは、がっかりしました。
「でも、ちょうどよいおともだちがいるよ。ちょうちょのチョンちゃんをしょうかいしてあげるよ。チョンちゃんはミツバチさんたちとなかよしだから、おうちのばしょもしっているはずだよ。」
バンくんはそういうと、せなかのはねをひろげて、すりあわせ、ふしぎなおとをだしました。
ぎーりぎり、ぎーりぎり。
すると、ひらひらとアゲハあげはちょうがやってきました。くろいはねに、キラキラときいろのもようがゆうやけにてらされ、まぶしいほどにうつくしいちょうでした。
「なあに。チョンのことをよんだかしら。いったいこんなじかんになんのよう？はねのていれをしていたところなのよ。」
うさぎのぎーくんはチョンちゃんにはなしました。
「はねのていれでいそがしいところごめんなさい。ぼくのたいせつなおともだちのおとこのこ、ケイくんが、のどをいためてくるしんでいるんだ。ミツバチさんのところにいっしょにいって、はちみつをちょっぴりわけてもらえないかな？」」
「あら、そんなことかんたんよ。わたしもときどき、おなかがすくとおいしいはちみつをわけてもらうのよ。はなのみつよりあまくて、げんきがでるよの。」
チョンちゃんは、ゆったりひらひらとはねをゆらしてこたえました。
うさぎのぎーくんと、シマリスのまりちゃんと、たぬきのタッキーはチョンちゃんのあとをはしっておいかけていきます。バッタのバンくんは、てをふっておみをくりをしました。
はらっぱをぬけたさきに、おおきなにれのきがありました。ケイくんのおうちよりおおきなきです。みどりいろのたくさんのはがしげっています。
チョンちゃんが「ぴゅーい」とよぶと、にれのきのはのかげから、いっぴきの、おおきなめをしたミツバチがやってきました。
チョンちゃんが、ミツバチのちかくでなにやらヒソヒソばなしをしています。
うさぎのぎーくんと、シマリスのまりちゃんとたぬきのタッキーはそらをみあげて、ふたりのようすをみまもっていました。
ミツバチは、しずかにこういいました。
「よいだろう。わたしたちがつくったはちみつをもっていなさい。」
そういうと、にれのきにむかってはねをふるわせ、ぶんぶんとおおきなおとをならしました。たぬきのタッキーはりょうてでみみをふさぎました。
すると、にれのはのかげから、たくさんのミツバチがでてきました。そして、あっというまに、にれのはっぱでコップをつくりました。
それから、にれのはっぱでできたコップに、あふれるほどのはちみつをいれてくれました。
「ミツバチさん、どうもありがとう」
みんなはおれいをいいました。
そして、そーっとそーっと、コップにはいったはちみつをはこびました。バッタのバンくんもてつだってくれました。
ゆっくりゆっくりあるいて、ケイくんのいえにつくころには、まんまるのおつきさまが、そらのうえでかがやいていました。
ケイくんが、つきのあかるさでめをさましました。
「あれ、こんなところにコップがある。ママがおいてくれたのかな？」
ケイくんは、にれのはっぱのコップにはいった、はちみつをゆっくりとのみました。
「うわぁ、なんておいしいんだろう。」
うさぎのぎーくんと、シマリスのまりちゃん、タヌキのタッキー、それからバッタのバンくんに、ちょうちょのチョンちゃん。みんなはそのようすをまどのそとからそーっとながめていました。そして、かおをみあわせて、にっこりわらいました。
つぎのあさ、ケイくんがめをさますと、おおきなこえでいいました。
「おはよう！あれ、のどのいたいのがなおっている。ママ、ぼくもうげんきだよ。おそとであそんできてもいい？」
「あら、なおってよかったわ。いってらっしゃい。」
ケイくんは、そとにでてウサギのぎーくんとかけっこをしてあそびました。そのようすを、シマリスのまりちゃんと、たぬきのタッキー、バッタのバンくん、ちょうちょのチョンちゃんがきのかげからみまもっていました。
そらのうえでは、たくさんのミツバチたちがはなのみつをあつめにとおくのやまへととんでいきました。
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