月の光

童話

むかしむかし、ある村にヨゼフという青年がいました。

ヨゼフは、身寄りがなく、お金持ちの屋敷で、使用人として働いていました。

 ある朝早く、ヨゼフと共に屋敷で暮らす使用人の少女ハンナが、ご主人様の大切なお皿を割ってしまいました。

ハンナ

は泣きながら言いました。

「まぁ、大変。どうしましょう。これはご主人様が命の次に大切にしているお皿。このことがご主人様に知れたら、私はきっとこの屋敷から追い出されてしまうに違いない。」

おいおいと泣くハンナを見て、ヨゼフは言いました。

「このお皿は私が割ったことにしよう。これは二人だけの秘密だよ。いいね。」

「でも、それではヨゼフが屋敷から追い出されてしまうわ。」

「私なら大丈夫。なぁに、ご主人様だってきっと許してくれるだろう。もう泣くのはおよし。」

ヨゼフはそう言ってハンナを安心させました。

二人は、幼い頃からこの屋敷でご主人様にこき使われ、お互いに励まし合って暮らしてきたのです。

 目が覚めて、朝食を食べる為にリビングにやってきたご主人様は、ヨゼフの告白が終わらぬうちに顔を真っ赤にして怒鳴りました。

「このお皿は、先祖代々受け継いできた大切なものだぞ。お前など今すぐこの屋敷から出て行け。」

 屋敷から追い出されたヨゼフは、行くあてもなくとぼとぼと歩き始めました。外は寒くて凍えそうです。着のみ着のまま追い出されたヨゼフには何もありません。

き歩いているうちにいつの間にか日が暮れて、あたりは真っ暗になってしまいました。仕方なく、ヨゼフは枯れ枝を集めてその上で休むことにしました。空を見上げると、丸くて大きな月が輝いていました。

「きれいな月だなぁ。あの月の光がこの手の中にあればきっと暖かいだろうなぁ。」

ヨゼフがそう呟くと、月から一筋の光がヨゼフに向かって真っすぐに降りてくるではありませんか。月の光は、ヨゼフの手の中で丸くなり輝き出しました。

「あぁ、なんて暖かいのだろうか。」

ヨゼフは、月の光を抱いたままいつの間にか眠ってしまいました。

 ヨゼフは、月の光に包まれているような幸せな気持ちで眠っていると、誰かが歩いてくる足音がしました。

「あぁ、困った。大変だ。道に迷ってしまった。」

と男の声がしました。

ヨゼフが目を覚ますと、立派なひげを生やした男が立っていました。

「いかがされましたか?

「おお、旅人よ。街に出かけた帰り道なのだが、すっかり道に迷ってしまったようだ。せめて明かりがあれば道がわかるのだが。」

それを聞いたヨゼフは、手の中にある月の光を男に差し出しました。

「それでは、この月の光をお使いください。」

「それはありがたい。」

ヨゼフが男に月の光を渡そうとすると、みるみるうちに消えてなくなりそうになりました。

「これはいけない。私がご一緒して、道を照らします。」

「やや、ありがたいことだ。それではお願いするとしよう。」

 ヨゼフは、腹が減って、本当はもう一歩も歩けないほどに疲れていましたが、男の足元を照らしながら一緒に歩きました。

 「あなたは旅人ですね。これからどちらまで向かうのですか?

と男が尋ねるので、ヨゼフはこれまでのことを正直に話しました。男は黙って聞いていました。

 しばらく歩くと、目の前にとても大きな城が見えてきました。

「なんと立派な城なのだ。私が働いていた屋敷の何倍も大きいではないか。この城に住んでいるのはどんな人だろうか。」

ヨゼフが驚いて言うと、

「これは私の城だ。」

と男は言いました。

「あなたの正直で優しい心に私は感動した。行くあてが無いのならば、この城で一緒に暮らさないか。」

 男はこの城の王様だったのです。

 ヨゼフは王様に気に入られて、子どものいない王様の息子になることができました。

 暖かい部屋で、温かい食事をとり、屋敷で使用人として働いていた頃からは想像がつかないくらい幸せな毎日を送ることができました。  やして、屋敷から使用人のハンナを呼び寄せ、二人は結婚して幸せになりましたとさ。

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